ゲイムマンのダイスステーション 日本縦断ゲーセン紀行
130.ダムとアプトと秘境駅
スタート時点での「ゲーム路銀」は、「ゲーセン」にちなんで¥5,000(G千)。
2009年12月2日。朝7時起床。ホテルで食事をとり、チェックアウト。 寒いが、よく晴れている。すがすがしい空気だ。
8時40分発のバスに乗る。ツアーのお客さんと同乗。 添乗員さんが説明していたが、奥泉駅から大井川鐵道井川線に乗るらしい。 朝の光を浴びた山々の中を、エンジンブレーキを使い、 ゆっくりと慎重にバスは下っていく。
9時20分、千頭駅前に到着。(ゲーム路銀 ¥6,565-¥860=¥5,705) 日が当たってるからかもしれないが、こっちは暖かい。
まずは入口近くの壁に並ぶ、カラフルなヘッドマーク。 間近で見ると、意外と大きいのに驚く。 タブレットとタブレット閉塞器、昭和初期の時刻表、車両銘板。 大井川鐵道の歴代復活SLを紹介するパネル。 引退したC11 312号機のナンバープレート。 大井川鐵道の歴史年表と、開通当時や昭和中頃の写真。 ジオラマ。大きなカレンダー。 提携するスイスのブリエンツ・ロートホルン鉄道や、台湾の阿里山森林鐵路のグッズ。 遊園地にあるサイズのミニSL。 2007年に復帰したC56(昨日千頭駅で見た緑の機関車)が、 修復され、復活運転されるまでの軌跡が、写真で詳しく解説されていた。 『ひるどき日本列島』でここを訪れた、内海桂子さんの書が掲げられていた。 「SLも見捨てられたら只 鉄の屑 生かして走らす二拾年」 私もここの展示を見て、本当に、多くの方々の尽力や支援によって、 SLが運行されているんだなあと、強く感じた。
隣に、クリームと紺のツートンカラーの電車がある。 私は阪神の車両かと思っていたが、 どうやら近鉄で1950年代から走っていた、421系という電車らしい。 このほか、無蓋貨車や車掌車、 クリームと赤に塗り分けられた、もと西武の351系電車も見られた。
音をテーマにした遊具が数多くある。 聴診器を使って、鳥の鳴き声を聴いたり、オーケストラをパートごとに聴いたり。 動物の絵に照準を合わせてシャッターを押し、その動物の声を聴いたり。 壁面に取り付けられた40本ものパイプが鳴って、館全体が大きなオルゴールとなる。 素朴なパイプ式オルゴールの、心地良い音の響。 私は時間の都合上、駆け足で回ることになってしまったが、音戯の郷にはほかにも、 280インチのスクリーンがあるシアターや、音の出るおもちゃを作れる体験工房もある。 奥大井 音戯の郷のホームページはこちら 千頭駅に戻った。いよいよここから、井川線の旅のスタートだ。
車内は1+2列のボックスシート。 車掌さんから、乗車証明書をいただいた。 10時40分、列車はゆっくりと動き出した。 出発して間もなく、右手に大井川が見える。 次の川根両国駅に、機関車と貨車が留置されていた。
トンネルをくぐる。トンネルには番号がついていた。終点まで61もあるらしい。 トンネルを抜けるたび、大井川の位置がだんだん低くなっていく。 もちろん列車の方が上っていっているからだが。 駅に止まるたびに、車掌さんが降りて、各車両のドアを開け閉めする。 のんびりしたスピードは、景色をながめたり、写真を撮ったりするのにちょうどいい。 東京ディズニーランドの、ウエスタンリバー鉄道を思い出した。
機関車が牽引する列車特有の、前後の揺れ。 土本(どもと)駅では、マンガ『鉄子の旅』でも書かれている、 「駅周辺のお宅4軒のうち3軒が土本さん」という解説を聞けた。 気づいたら、ずいぶん急な崖の上を走っている。 川根小山駅で、千頭行きの列車とすれ違う。 今朝のツアー客の例があるから、奥泉駅で多くのお客さんが乗り込むかと思ったが、 この列車ではそうでもなかった。
この橋の下を通り、大井川を渡って、遂にアプトいちしろ駅に到着した。
ここから、隣の長島ダム駅までは、アプト式区間となる。この区間には、 90パーミル(9パーセント。100メートル進む間に9メートル高くなる)という、 日本の鉄道では最も急な勾配がある。 箱根登山鉄道の最急勾配が80パーミルだから、あれより傾いている。 これだけ急勾配だと、普通の鉄道では上れないので、 2本の線路の間に、凹凸のあるラックレールを敷き、 機関車の床下についた歯車をかませて進むのだ。
アプト式の線路は、昭和30年代まで、信越本線の横川−軽井沢間にあったが、 現在、日本ではここにしかない。 この駅で、アプト式の電気機関車が連結される。 その連結作業を見ようと、お客さんが全員ホームに降りた。
さすがに90パーミルの急勾配。列車がすごく傾いていることが感覚でわかる。
このダムが建設される際、 もともとあった線路がダムに沈むことになったため、 新たに造られたのが、このアプト区間を含む路線である。 だからここにアプト式区間ができたのは、1990年(平成2年)と、比較的新しい。
ダムの向こうに、噴水が上がるのが見えた。
長島ダムのホームページ 長島ダムふれあい館のホームページ 難読地名のためひらがなになった、ひらんだ駅(漢字だと「平田」と書くらしい)。 ここからも、引き続き接岨湖がきれいに見える。 駅を出て、長いトンネルに入った。
接岨峡温泉が近づく。川の対岸は遊歩道になっているらしく、つり橋や太鼓橋が並ぶ。 (タイミングを逃して、写真は撮れなかった) 接岨峡温泉駅で、千頭行きの列車とすれ違う。
接岨峡温泉を出ると、渓谷はいよいよ深くなる。 線路と同じ高さに、つり橋の歩道橋が2本ほど架かっているが、 歩く人はいるのだろうか?
関の沢鉄橋の高さは、私鉄日本一。 雑誌やネットなどでは、「高さ100メートル」と紹介されていることが多いが、 大井川鐵道のパンフレット「ミニ列車で行く南アルプスあぷとラインの旅」では、 なぜか「高さ約71m」となっていた。 橋を渡ると静岡市葵区に入るが、人家のない風景に変わりはない。
閑蔵駅を発車。右下が崖という状況に、慣れてしまっていることがこわい。
次々とトンネルを抜ける。急カーブで車輪がキイキイいう。
大井川鐵道のホームページはこちら
井川ダムは、日本初の「中空重力式ダム」だという。 中空重力式ダムとは、コンクリートの重さで水圧を支える重力式ダムのうち、 内部に空洞を設けたもの。 ダムの名前は「井川五郎ダム」と書かれていた。
サイレンが鳴り響いた。 放水の合図かと思ったが、しばらく待っても放水が始まる気配はない。
井川駅へ戻る。駅への階段の下に売店がある。 地元の農産物などを売っている。きのこ、わさびから蜂の子まで。 食堂もあったが、今から食べてると乗り遅れるので、立ち寄らなかった。 駅舎内に掲げられた、数多くの写真を見ていると、 念願だった大井川鐵道の完乗を果たしたという、実感が湧いてきた。 午後1時22分発の列車に乗る。来たときと同じ車両だった。 出発。キイキイいう列車に揺られて、再び南アルプスの景色をじっくりとながめる。 奥泉ダムが見える辺り、線路沿いで耐震工事の作業員さんが数人働いていた。 崖の上での作業は、さぞ大変だろうと思う。 閑蔵駅で、トロッコ車両が連結された井川行き列車とすれ違う。
タヌキの像と駅名標の間には、 井川駅などにもあった、文字の書かれたボードが立っている。 民話か童話が書かれているようだが、降りなかったのでじっくりとは読まなかった。 尾盛は、牛山隆信氏の本『秘境駅へ行こう』の表紙になるくらいすごい秘境駅で、 駅に通じる道路が1本もない。 ダムの建設中は、作業員の宿舎があったらしい。 また、木材の積み出しも行なわれていたらしい。 尾盛駅を出発。さっき歩道のつり橋があった辺りで、 足場が組まれ、10人ほどの方が工事をされていた。
駅前に「森林露天風呂」があり、橋を渡った先には「接岨峡温泉会館」がある。 どちらに行こうか迷ったが、 家並みが近くにある、温泉会館の方へ行ってみることにした。 駅にコインロッカーはあったが、小銭の持ち合わせがなかったので、 荷物を持って移動する。 ちなみに、森林露天風呂のホームページはこちら。 林の中のくねくねとした下り坂を歩く。途中に階段をつけたら、まっすぐ降りられるのに。 橋を渡っているときに、 音戯の郷の入館券シールを貼りっぱなしだったことに気がつき、あわててはがす。
いかにも町の共同浴場といった感じで、この時間でもお客さんがけっこういらっしゃる。 急いでいたけど、それでも5分くらいはお湯に浸かって、旅の疲れと筋肉痛を癒す。 広くはないけどくつろげる。 急いでいたのでタオルを買うのを忘れ、上がってからハンカチで体を拭いた。 接岨峡温泉会館(川根本町まちづくり観光協会のサイト)
資料館やまびこの前を通った。 奥大井の生活や名所、林業についての展示があり、 昆虫や植物の標本も多くあるらしい。展望台もあるらしい。 資料館やまびこ(川根本町まちづくり観光協会のサイト) だが、さすがにここに寄ってたら、次の列車に間に合わない。 チッチッ、ジージーという鳥の声を聞きながら、林の中の道を歩く。 すごくゆっくり歩いてきたけれど、2時47分には駅に着いた。 上り坂を駆け上がるはめにならなくてよかった。
そして私の乗る千頭行きが来た。さっき閑蔵ですれ違ったトロッコつき編成だ。 トロッコ車両に乗れば写真を撮りやすそうだが、 もう写真はそんなに撮らないと思うので、普通の車両に乗った。3時1分出発。 奥大井湖上を出て、レインボーブリッジからトンネルに入る直前、 水面ぎりぎりに旧線のトンネルが見えた。
当然のことながら、今度のアプト式線路では前に傾いて走る。 アプトいちしろ駅で、アプト式機関車が切り離された。 川根小山まで来ると、だいぶ“下りてきた”感じがする。行きにはなかった感覚だ。 土本あたりでさらに下る。川面とはもう数メートルくらいの差しかない。
川を渡る。ずいぶん低い所に来たと思う。線路はまだ下っている。 こんなに下がったら、地下鉄になっちゃうんじゃないか、くらいの感覚。 もちろん昨日もここを通ってるから、そうならないのは知ってるけど。
5時になり、町に『ふるさと』のメロディーが流れた。 案の定、とっぷりと日が暮れた。寒くなってきた。 駅前の商店の自販機でコーヒーを買う。 あったかいのを買ったつもりが、間違って冷たいのを買ってしまった。 でも、おいしいからいいか。 twitterに書き込みつつ電車を待つ。 昭和30年代風の駅舎に来て、ツイッター見るのもどうかと思うが。 5時17分の下りの南海ズームカーを見送る。 無人駅なので、降りたお客さんは駅舎の外を通って出ていく。 予定どおり、5時27分の電車に乗って金谷まで戻る。 車両は京阪の元テレビカーだった。暖房が効いてて、落ち着く。 結局、南海ズームカーと京阪テレビカーには乗ったけど、 近鉄の特急車両にだけは乗れなかったか。 もう景色はほとんど見えない。 橋と街灯があり、その街灯の光が下に映っているから、どうやら川沿いだとわかる程度。 塩郷のつり橋「恋金橋」も見えなかった。 さっき、田野口と塩郷とどっちで降りようか迷ったけど、 つり橋は昨日、寸又峡で渡っていて、もういいだろうと思ったので田野口の方にした。 川根温泉笹間渡駅を出て、川を渡っているとき、 左手に温泉施設「ふれあいの泉」の窓明かりが見えた。 温水プール棟が全面ガラス窓になっていた。 家山駅で下り電車とすれ違い。下りの方が近鉄車だった。 五和を過ぎると建物が増えてきた。
東海道線6時43分発の下りで掛川まで行き、7時31分の新幹線で帰った。 ¥1,315 今回のルート
静岡観光コンベンション協会(静岡市・焼津市・藤枝市・島田市) 島田市観光協会 牧之原市観光協会 川根本町まちづくり観光協会 ハローナビしずおか(静岡県) 大井川鐵道 JR東海 次回、「日本縦断ゲーセン紀行 131.静岡編(17)」は、 掛川のお城とコノハズク。 「日本縦断ゲーセン紀行 129.静岡編(15)」に戻る 「ゲイムマンのダイスステーション」タイトルページに戻る |
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