ゲイムマンのダイスステーション 日本縦断ゲーセン紀行
129.日本一楽しいローカル線
スタート時点での「ゲーム路銀」は、「ゲーセン」にちなんで¥5,000(G千)。 2009年12月1日。7時45分起床。ホテルで朝食をとり、チェックアウトして、 島田駅9時14分発の下り電車に乗り、大井川を渡る。
9時45分の電車に乗って、まずは隣の新金谷駅を目指す。 これから2日間で、金谷と終点の井川を往復し、途中でバスにも乗る。 この行程だと、本来なら「大井川全線フリーキップ」が便利。 このフリーキップは¥6,600だが、12月から3月まで、つまり今日から¥5,000となる。 ただしゲーセン紀行では、フリー切符の類は使えないルールなので、 正規の運賃をゲーム路銀から引く。(ゲーム路銀 ¥10,065-¥150=¥9,915)
ここからいよいよ、日本一みどころが多くて、おもしろいローカル線、 大井川鐵道の旅の始まりだ。 しばらくは、さっき通ったJRの線路と並行する。JR側が一段高い位置にある。 やがて左に曲がってJRと分かれ、小さな川を渡る。左に製銅工場。 もと近鉄の電車や、茶色い客車、そしてSLが留置されている横を通り過ぎ、
広いスペースに、おみやげコーナー、喫茶スペース、数多くのベンチ。 さらに、「ロコミュージアム」と名づけられたスペースがあった。 島根県の一畑軽便鉄道(後の一畑電気鉄道)などで活躍していた、 大正時代・ドイツ製の蒸気機関車や、 大井川鐵道がSL急行を運行する前、千頭−川根両国間でSLを走らせていたときに使われた、 同じく大正時代・ドイツ製のSL、1275型。 そして、かつて井川線で走っていた客車が展示されている。 いずれも小さくて、おもちゃのようなメルヘンチックな姿。 ほかにも、さまざまな物が展示されていた。 各国のSLのおもちゃ、SLのバッジやライター、ヨーロッパ風のジオラマ、SLの模型。 古い駅舎を模した一角に、昔の電話ボックスやポスト、ポスター、 駅名のハンコや、タブレットなどがある。 昭和時代の映画のポスターも多い。 ショッピングセンターのゲームコーナーによくある、上下に動く乗り物もあった。 ニューUFOキャッチャーから、『ソニック・ザ・ヘッジホッグ』の音楽が流れている。 大井川鐵道のホームページ(プラザロコの紹介あり) 団体さんが入ってきた。個人のお客さんも続々やってきて、 プラザロコ内がにぎわってきた。 私は駅に戻って、SL急行券を買う。(ゲーム路銀 ¥9,915-¥560=¥9,355) 事前にネット予約をしていたので、直前になっても安心して買える。 土日だと予約が取れないことが多くて、それで今回、平日の旅になったのだ。 平日なので、お客さんは年配の方が多い。 わずかに家族連れ、あと私と同じような鉄道マニア風の方も若干。 11時ちょうど、改札が開く。すぐにホームは人でいっぱいになった。 金谷駅で見た情報によると、この便は客車3両。ほぼ満員だろうか? 遠くでSLの煙が見えるが、金谷駅を出発する時刻になっても動かないので、 どうやら、待機している2本目のSL急行のようだ。SLは事前の準備に時間がかかる。
11時12分、ポオーッという汽笛とともに、SL急行が動き出した。駅員さんたちがホームで見送る。
機関車のすぐ後ろの席なので、窓からときどき煙が見える。 ゆっくり走っているときは黒い煙、スピードが出ると白い煙。 ひと通り車内アナウンスの解説が終わると、ハーモニカの音が流れた。 それが終わった頃、
左右とも、山の斜面のそこかしこに、鮮やかな緑の茶畑が点在。 左手にタヌキの像が立ち並ぶ神尾駅を過ぎてすぐ、長いトンネルに入った。 照明は薄暗い。煙が車内に入ると困るので、窓を開けられない区間だ。 トンネルを抜けると、民家はほとんど見えなくなった。右は大井川、左は崖下。 女性の車掌さんが歌う『SL音頭』が、旅に来たことを実感させる。
車内販売で、SLチョロQを買った。 大井川鐵道が所有するもう1両のC11、227号機がモデル。
家山を出発してすぐ、解説の女性車掌さんが、 このSLで使っている石炭を持って、3号車に回ってきた。 カスが出にくいように、いったん練った石炭を使っているそうだ。
右手には、温泉施設「川根温泉ふれあいの泉」がある。 川根温泉笹間渡(ささまど)駅から近いらしい。 露天風呂からSLが見える場所として、観光ガイドブックによく載っているが、 今日は休館日。 川根温泉 ふれあいの泉のホームページはこちら この3号車は、スハフ42の286号車。車掌さんの解説によると、1954年(昭和29年)製。 55年も前に造られた客車に乗れるというのはすごいことだなあと、あらためて感じる。 昭和50年代には清水港線で走っていたとのこと。 今のエスパルスドリームプラザのあたりを通っていたわけか。 地名(じな)駅を通過してすぐ、ごく短いトンネルを抜ける。 かつて、木材を運ぶロープウェーがこの上を通っていて、 万が一のとき線路や電車を守るために造られた。 もう1つトンネルを抜け、大井川の先の方を見ると、細い糸のようなつり橋が見える。
大井川はいったん小さなダム湖となった後、再び元の細さに戻る。 下泉駅で停車して、南海電車とすれ違った。 私にとってSLは、懐かしい乗り物というより、アトラクションに近い。 観光用以外で走っていた時代に乗ったことはない。 たまたま室蘭本線沿線に住んでいた頃、 最後の旅客列車となった「さようならSL」を、家の前の公園で見たことはあるが。 それでもSLには、懐かしさを感じるから不思議だ。 私より下の世代の方々は、SLに乗ることで、 懐かしさを感じるというより、知らない時代を体験するのかもしれない。
大井川鐵道のホームページはこちら
駅の近くにあるという、フォーレなかかわね茶茗舘(ちゃめいかん)を目指して歩く。 駅からまっすぐ行くと、高校があった。 さらに先へ進んで、突き当たりを右に折れ、町営サッカー場の前を通ると地図がある。 ……あさっての方向に向かっていたことをここで知った。 大きな荷物を抱えていたこともあり、がっくりきて力が抜けた。 仕方なく、もと来た方へ戻る。ホームのすぐ横の踏切を渡って左折。
庭にいた幼稚園児たちが歓声を上げたので、何かと思ったら、
2階の展示室では、中川根の歴史が解説されていた。 江戸時代には天領だったこと。大井川の水運や水害。鉄道開通。戦後復興。 そして中川根のお茶の歴史。お茶は江戸時代にも作られていたが、 明治時代に貿易品となり、生産量が増加した。 かごや茶つぼ、茶箱、ポスターなどが展示されている。 お茶の健康への効果についても書かれていた。 地元の林業や工業も紹介。 盆踊りの「鹿ん舞」の衣装。擬人化された白い鹿の顔がユニーク。 1階には、藤城清治さんの影絵が展示されている。 SL、茶畑、つり橋、鹿ん舞などが、 藤城さんらしいファンタジックな世界に組み込まれていた。 ホントはここで軽く、お茶とお菓子をいただこうと考えていたが、 道に迷った分、時間がなくなった。 売店で、ペットボトル入りの川根茶を買って、駅へと戻る。 フォーレなかかわね茶茗舘のホームページはこちら
次の電車は、ちょうど20分後の午後2時2分。 駅に入ると、中に茶茗舘へのわかりやすい地図があった。 駅舎の中はよく確認しておくべきだと痛感した。 壁に貼られた写真やポスターをながめて電車を待つ。 ホームに出た。構内踏切の鐘が鳴り、まず金谷行きの南海電車が到着。 続いて、私の乗る千頭行きが来る。 もと京阪の特急車3000系だ。昭和40年代後半から平成の頭まで活躍。 車内にテレビがついていて、「テレビカー」と呼ばれていた。 (大井川鐵道に入った際、テレビは撤去された) なお、台車は旧営団地下鉄(現・東京メトロ)東西線5000系のものが使われている。 南海車と同じく、車内は転換クロスシート。 自分が生まれた頃に造られた車両だが、SLの客車の後だと、新しく感じる。 今度は普通電車なので各駅に止まる。 茶畑と家並みが広がる青部を出ると、大井川を渡り、今度は川の左岸を走る。 崎平を経て、また大井川を渡り、トンネルを通ってまた大井川を渡る。 右手に学校と製茶工場。左手に転車台と各種車両。
このC56 44号機は、大井川鐵道で唯一の、炭水車を連結しているテンダー式機関車。 戦時中はタイで活動し、1979年(昭和54年)に日本へ帰国。 以後、大井川鐵道で活躍を続けており、 大修理を経て復活した2007年(平成19年)から、タイ時代のカラーリングで走っている。
1本向こうのホームから、別のSL列車が発車していった。 大井川鐵道のホームページはこちら
乗客は5人だった。いったん踏切を渡って、駅裏の「音戯の郷」前を通り、 そのまま折り返して、別の踏切を渡った。 右手に大井川が見える。橋を渡って今度は川が左に。橋の手前に、井川線の車両基地。 トンネルに入った。随分長い。出たところで橋を渡るが、川は依然左側。 大井川が曲がりくねっているため、この区間だけは川の下流側へ向かうことになる。
さらに山奥へ進んでいく。 バスは普通のサイズなのだが、道幅はこのバスがやっと1台通れる程度。 私は右側の席に座っているのに、窓の外ぎりぎりにガードレールが見える。
ここで運転手さんから説明が入る。このダムは、大井川ダムというらしい。 240メートルも下にあるそうだ。
写真を撮ってみると、景色がまるで、 本城直季氏の写真集『small planet』ばりに、ミニチュアのように写った。 空気が澄んでいて、遠くの景色なのに、あまりぼやけて見えないからだろうか。 (↑上の写真は縮小しているので、ミニチュアっぽさが薄くなってしまった。 もとの写真では手前の枝だけが適度にぼやけていたのだが) 峠を越えて、今度は下り坂。けっこう対向車が多い。 よくこんな険しい山に、道路が通せたもんだ。 この道路も、鉄道に負けず劣らずのアトラクションだ。
午後3時2分、寸又峡温泉入口で降りた。(ゲーム路銀 ¥7,625-¥860=¥6,765) やっぱり空気がちょっとひんやりしている。
ロビーや廊下は洋風の、高級感ある内装。広い和室に入ってくつろぐ。 あんまり1人で来るお客さんはいないかも。 若干車酔い気味なので、酔いざましを兼ねて、温泉郷を少し散策しよう。
温泉街を歩く。温泉街といっても派手なものではなく、山懐に抱かれた集落といった感じ。
すれ違う人は何人かいるが、これから入っていく人は、私以外に見当たらない。 1周90分かかるらしいので、今から行ったら多分、帰りは日没後になるだろう。
トンネルの中で、中部電力の車とすれ違った。 この先にあるダムの管理をしているのだろうか。 こういう車が通るからか、トンネル内には、歩行者道なのに両サイドに歩道がある。
軽い気持ちで渡り始めたはいいが、揺れるし、長いし、下が見えるしで、 橋の真ん中少し手前あたりから、急に怖くなってきた。 無事に渡り終えた後も、しばらく体が揺れているような感覚がおさまらなかった。
“チンダル現象”とは、1ミクロン以下のごく小さな微粒子に光が反射する現象で、 チンダル湖では水中の微粒子に、太陽光の青い光のみが反射するため、 湖水は透き通らず、青い色に見えるのだそうだ。 よく、木漏れ日が白く見えることがあるが、あれもチンダル現象のせいらしい。 かなり上った所にベンチがあった。「くろう坂」と書かれていた。 ……苦労している。
分かれ道を左へ進む。(右へ進めば展望台があったらしいが、気づかなかった)
正面の山は、岩壁となって、まるでこちらに迫ってくるようだ。 左右の山々をながめると、本当にこんな山深い秘境に来て、大丈夫かなと不安になる。
ようやく人間界に戻ってきた! と思ったが、その先はさらに暗い山道。 まだ温泉街にはたどり着かない。 かろうじて今歩いている道路が見える。人間の目って、暗さにけっこう慣れるもんだ。 はるか後ろから、カップルとおぼしき話し声がかすかに聞こえるのだが、 その姿までは確認できない。もしかしたら空耳かもしれない。 家々の明かりが見えてきたときはホッとした。 と同時に、自分が夢の中かどこかを歩いているかのような感覚に襲われた。 5時14分、プロムナード入口に到着。 途中の上り階段をあんなゆっくりしたペースで歩いて、90分弱で抜けられたのだから、 「1周90分」という説明は、現実に即していると言えよう。無理なく歩いて90分。 日が暮れかけた山道を1人で歩いているときは、 「これで人生観変わるかも」と思ったけど、 真っ暗になるとそんな余裕もなく、 ただひたすら「早く脱出したい」という一心で歩いていた。 寸又峡温泉のホームページはこちら 温泉街もかなり暗くなっていた。 さっきここからプロムナードへ向かうときには、多くのお客さんがいたのだが、 もうそれぞれの宿に入ったようだ。 午後5時20分、奥大井観光ホテル翠紅苑に帰ってきた。 6時半から夕食。ヤマメの塩焼き、猪鍋、さまざまなきのこなど、 山の幸をたっぷりと堪能。 食後そのまま大浴場へ。昨日・今日と歩き回った疲れを癒そう。 泉質は硫黄泉で、お湯がつるつるとした感じ。あったまる。 露天風呂の場所は寒かったけど、風呂に入って出てくると寒くなくなった。 入浴後、本館と大浴場の間にあるゲームコーナーへ。 UFOキャッチャー、ワニワニパニックのほかに、 なんと『ザ・キング・オブ・ファイターズ'98』があったのだ! まさか寸又峡で、ゲーム路銀を増やせるチャンスに恵まれるとは。 プレイしてみた。キャラクターはアテナ・キング・ユリを選択。 しかし、ランクが高く設定されていたのか、1面でゲームオーバー。 再挑戦してみるも、やっぱり1面もクリアできずにゲームオーバー。 ゲーム路銀を増やすどころか減らしてしまう。 これ以上減らしたら、金谷に戻れなくなるかもしれないので、 悔しいけどもうあきらめた。(ゲーム路銀 ¥6,765-¥200=¥6,565) 8時15分から、大浴場の男湯と女湯が入れ替わる。 9時頃、もう一度大浴場へ行き、もう一方の浴室に入ってきた。 露天風呂から空を見上げると、まんまるい月が輝いていた。 奥大井観光ホテル翠紅苑のホームページはこちら ¥6,565 今回のルート
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