ゲイムマンのダイスステーション

日本縦断ゲーセン紀行

35.宮沢賢治が観光資源
〜岩手編(7)〜


スタート時点での「ゲーム路銀」は、「ゲーセン」にちなんで\5,000(G千)。
ゲーセンでゲームをプレーして、1面クリアーするごとに、
「ゲーム路銀」は\100ずつ増える。
(ただし、1プレー\50円のゲームなら\50ずつ、1プレー\200なら\200ずつ。
 ゲームをプレーするためのお金も、「ゲーム路銀」からねん出する)
この「ゲーム路銀」だけを交通費にして、日本縦断を目指すのだ!
(前回までのゲーム路銀 \4,520



2004年10月30日。
昨日よりもゆっくりできてありがたい。
疲れているし、筋肉痛なのだ。
朝からドリンク剤を飲む。

昨日と同じ、快速はまゆりに乗る。
花巻から乗ったので、昨日より30分遅い9時11分発。

9時24分、土沢着。
土沢駅のエスペラント語愛称は、
「Brila Rivero(ブリーラリヴェーロ)」(光る川)。


宮守〜岩根橋〜晴山(はるやま)〜
土沢

東和町にある土沢駅。
駅舎内に、無料貸し出し文庫がある。
「ワンダースワンの旅」をやってた時に、
常磐線のローカル駅でもよく見たものだ。懐かしい。

この駅は、岩手軽便鉄道開通時の終点だった。
1913年(大正2年)に開通した岩手軽便鉄道は、
宮沢賢治が地質調査に向かうために、たびたび利用した路線で、
『銀河鉄道の夜』のモデルになったといわれている。

坂を上って、萬鉄五郎(よろず・てつごろう)記念美術館へ向かう。

萬鉄五郎記念美術館。
ご当地出身の画家、萬鉄五郎の作品を中心に展示している。
(入館料\600(特別展込み))。
この場所は、萬の通った土沢小学校の跡地。
左にある建物は、生家の土蔵を復元した、
喫茶店&ハイビジョンミュージアム「八丁土蔵」。

まず特別展示室へ。特別展は愛媛県の久万美術館所蔵「井部コレクション」
(2004年12月12日まで)。
井部栄治氏が所蔵していた洋画を展示。萬鉄五郎や、その前後の時代の洋画家の作品。

常設展では、萬の作品が年代ごとに展示されていた。
フォービズム、キュビズムをいち早く取り入れ、晩年には南画と洋画の融合を目指していたそうだ。
時代によって作風がまるで違うのがおもしろい。
萬は42歳で亡くなっているが、もしもっと長生きしていたら、
また新たなものができていたのかもしれない。
洋画のほかに、写真やその乾板も数多く展示されているのがユニークだった。
萬鉄五郎記念美術館のホームページはこちら。

美術館前から見た景色。

駅に戻ったのは10時55分。
運良くちょうど、11時4分発・花巻行きの改札が始まった。
跨線橋はおろか遮断機さえない線路を渡って上りホームへ。
まず下り列車、次いで上り列車がやってきた。
赤や黄色に彩られた木々が町なかにあふれる土沢の市街地を過ぎて、田園風景を走る。


〜小山田〜
新花巻

11時13分、新花巻着(ゲーム路銀 \4,520-\200=\4,320)。
新幹線も止まる駅なのに、釜石線のホームは1面1線のみ。
エスペラント語愛称は「Stelaro ステラーロ」(星座)。
新幹線側の待合室には、おみこしや鹿踊り(ししおどり)の衣装、
周辺各市町村の特産品が展示されている。
ちょうど、盛岡行きのやまびこが着いたところで、人が多い。

駅前に「セロ弾きのゴーシュ」のレリーフがある。
近づくと『トロイメライ』が流れる。

ここでの目的地は、宮沢賢治記念館だが、バスは11時7分に出たばかり。
次のバスは、……12時17分。
なぜか今、すごく疲れている。徒歩は避けたい。
考えたあげく、記念館までそれほど遠くないだろうと判断し、タクシーを使うことにした。
ただし、記念館よりちょっと手前にある「宮沢賢治童話村」まで。
目論見どおり、ワンメーター\580で到着した。
ゲーム路銀 \4,320-\580=\3,740

宮沢賢治童話村。
賢治の作品をモチーフにしたテーマパークだ。
私はかつて、修学旅行で2度花巻に来たことがあるが、
童話村は1996年(平成8年)にオープンした新しい施設なので、
来るのは初めて。

入館料\350だが、宮沢賢治記念館、花巻新渡戸記念館、花巻市博物館との共通券があり、
しかも2館券、3館券、4館券があるという便利なシステム。
2館共通入館券を\550で購入。

写真奥にある、「賢治の学校」と名づけられた建物へ。
入口に通じる道には、「のっぽになるゲート」や、
上り坂になっている下り階段がある。

最初の展示は、「ファンタジックホール」という真っ白な部屋。
星や雲や植物など、宮沢賢治の作品をイメージした椅子が並ぶ。
真っ白い本棚、真っ白いコートと鞄、イメージ映像の流れるモニター。

その先には、宇宙、天空、大地(虫の世界)、水の中をイメージした部屋が続く。
それぞれの部屋があまり大きくなく、すぐに見終わってしまう。
せっかくモニターがあるのだから、そこに流れる映像に、
もうちょっとストーリー性を付加したほうがいいかなと思った。

最後にあった「ギャラリー」が良かった。
『セロ弾きのゴーシュ』『注文の多い料理店』の各場面が、人形で再現されている。
『オツベルと象』もイラスト入りで紹介。
ファンタジックで、ちょっとシュールで、無国籍感あふれる、宮沢賢治の世界が見えてきた。

7棟のログハウスが、森の中に並んでいる。
こちらは「賢治の教室」。
各室ごとに、賢治の童話に登場する、
石、鳥、星、動物、植物などを解説している。

「植物の教室」では造花の花壇、「動物の教室」ではユーモラスなペーパークラフト、
「鳥の教室」ではウッドクラフトによる鳥というように、
見せかたがそれぞれ凝っていて、しかもわかりやすかった。

周囲の森を散策。
「ふくろうの小径(こみち)」には、本をかたどったベンチ(右写真)など
オブジェがいくつか置かれていて、屋外美術館のよう。
「妖精の小径」には、腰掛けると物語が聞こえるベンチがある。

宮沢賢治童話村のホームページはこちら。

宮沢賢治イーハトーブ館へ移動する(入館無料)。
企画展は「泉啓一ガラス絵 賢治曼荼羅展」。
作品のシーンをガラス絵で表現。
また、入口の売店には賢治の作品が数多く取りそろっている。

驚いたことに、ここにはスーパーファミコンと、
かつてヘクトから出ていた『イーハトーヴォ物語』というゲームがあった。
宮沢賢治の世界をテーマにしたゲームだが、
あまり話題にならなかった作品。
ゲームソフト自体はプレミアがつくようなものではないはずだが、
この場所に置かれているということに価値がある。
私もやったことがなかったので、プレーしてみたい衝動に駆られたが、
この静かな雰囲気の中では場違いなことはなはだしいので、
自重して次の場所へと向かう。

宮沢賢治学会イーハトーブセンター

賢治が設計した「日時計花壇」(左写真)と
「南斜花壇」が再現されていた。
季節が悪かったのか、花はあまり咲いていなかったけど。
この先に、宮沢賢治記念館があるはずだが……、

長い長い長い階段が続く。息が切れる。

「下ノ畑ニ居リマス 賢治」の文字は、
賢治が農業指導のために設立した、
羅須地人協会の建物に書かれた字を再現したもの。
建物は現在、花巻農業高校の一角に移築されているそうだ。

やっと階段を上りきった。どっと疲れが出たが、
さっきまでのわけのわからない疲れとは違う、心地良いものだ。
さあ記念館へ……行く前に、
レストラン山猫軒で休憩。お昼にする。

「山猫軒」という名前は、もちろん『注文の多い料理店』からとったものだが、
お話のほうとは違って、ちゃんと食事はできる。
いい雰囲気の洋食屋である。

今度こそ、宮沢賢治記念館へ。
入口前で、ガラスのフクロウ像が出迎える。
入館料\350だが、私は先ほど童話村で買った共通券で入館。

私は修学旅行で2度ここに来たはずだが、あまり記憶に残っていない。
それもそのはずで、序盤早々、賢治のバックボーンとなる、
宗教(日蓮宗)や科学の、専門的な話が続くのだ。
中学生・高校生にはちょっと難しいかもしれない。
今回は、さっき童話村で「賢治の教室」を見てから来たから、
科学の話、特に鉱石や天体については、どうにか理解できたと思う。

中盤は、いよいよ作品の解説。
心象スケッチ『春と修羅』、『注文の多い料理店』の初版本とその挿絵、
『風の又三郎』や『銀河鉄道の夜』の、度重なる推敲の経緯など。
(岩手軽便鉄道の写真あり)
さらに文章だけにはとどまらず、シュールな絵、花壇の設計図、音楽、演劇まで。
その創作分野は多岐にわたっている。
モニターとスピーカーで、数々の童話を聴くこともできる(イラストと語り)。

さらにさらに、忘れてはいけない、宮沢賢治の農業指導者としての側面。
花巻農学校で教師となり、後に羅須地人協会を設立。
実物展示のコーナーでは、羅須地人協会で使われた鍬(くわ)や、
愛用のセロ(チェロ)とメトロノーム、妹が持っていたバイオリンなどが展示されていた。

企画展は、賢治の初期の作品、『蜘蛛となめくじと狸』について。
『双子の星』と同時代くらいに書かれたものだが、かなり救われない話。
蜘蛛となめくじと狸の3匹が、ほかの動物をだまして食べてしまうのだが、
最後には3匹とも死んでしまう。
因果応報を書いているともいえる。
ストーリー展開もまとまりを欠いているためか、後に本人の手で改作されている。

記念館のベランダからの眺め。
木々の向こうに川が見える。

賢治作品が海外でどう評価されたかが解説されていた。
各国の言語による「どっどど どどうど どどうど どどう」(『風の又三郎』)がおもしろい。
最後に、3面スクリーンで『宮沢賢治の四季』という映像を見る。
やや古い映像だが、賢治の生涯が、花巻や盛岡の風景を交えながら紹介されている。
最初にこれを見てから、館内を回ったほうが、わかりやすかったかもしれない。
宮沢賢治記念館のホームページはこちら。

記念館を出ると、午後4時40分。
薄暗い。
がんばって駅まで歩こう。帰りは下り坂だから楽なはずだ。
そう決心して10分後、バス停の前へたどり着く。
バスを待っている人がいた。
時刻表を見る。4時57分にバスが来るようだ。
あとたった7分。
ちょっと迷ったが、この後の予定を考えると、早く駅まで戻ったほうがいい。
バスを待つことにした。

さほど待たずにバスが来て、一気に坂を駆けくだり、新花巻着5時ちょうど。
ゲーム路銀 \3,740-\140=\3,600
私のほかに、同じバス停で乗った、若い女性2人組が2組いたが、全員がここで降りた。

さて、釜石線もこれで最後だ。花巻駅へ行こう。
次の列車は、……
5時54分。
……思わず、ひざから崩れ落ちた。
最後の最後まで、山田・釜石線の本数の少なさには悩まされる。

駅前のバス停に戻ってみると、5時17分の花巻行きバスがあって、また迷う。
釜石線の残りの区間は、既にホテルなどとの往復で、2往復半も通っており、
川を2本渡る区間であることも知っている。
でも結局、列車を待つことにした。
バスは今来た道を戻る路線で、記念館と新花巻駅との、往復分の移動が無駄になる。
それにゲーム路銀が減ってきたので、運賃のわからないバスでの移動は不安がある。
それに、かなり歩いたので、駅の待合室で休みたい。
……と、いろいろ建前を考えてみたが、結局のところ、鉄道が好きというだけである。
昨日の遠野や宮守での、1時間以上の待ち時間に比べれば、大したことはない。
小岩井リンゴジュースを買って飲み、快適な待合室でしばし待つ。

5時40分少し前に待合室を出て、釜石線のホームへ。
1面1線、しかも自動券売機がなく、
出札口の駅員さんから切符を買うシステム。
ただ、その駅員さんがいたおかげで、
うっかり私が逆方向の列車に乗ってしまいそうになるのを、
止めてもらうことができた。
ゲーム路銀 \3,600-\200=\3,400

今度こそ5時54分、花巻行きの列車に乗る。
新幹線の高架が遠ざかっていく。
暗くてまったく見えないが、似内(にたない)駅の手前で北上川を、
似内を過ぎてから、支流の瀬川を渡っているはず。
似内を出てすぐ右手に、高速道路の花巻空港ICが見えた。
さまざまな店舗の看板が立ち並んでいる道路は、国道4号線か。

6時4分、終点、花巻駅に着く。
エスペラント語の愛称は、「C^ielarko チェールアルコ」(虹)。

改札を出たところに、鹿踊りの衣装が展示されていた。
「ようこそ温泉と賢治の里へ
東京駅→花巻駅 ちょうど500km」とある。
考えてみれば、宮沢賢治というたった1人の人が生まれたことで、
この町に多くの観光客が訪れている。
これってすごいことだと思う。


〜似内(にたない)〜
花巻

東北本線と釜石線が交わる花巻駅。
花巻温泉郷へのバスも出ており、駅舎はかなり大きい。
正面にあるステンドグラス風の装飾窓がきれい。

今日はここからゲーセン紀行。
「ハロータイトー アルテ花巻店」を目指す。
途中の道路沿いにあった、
「未来都市 銀河地球鉄道壁画」を鑑賞。
SLと天体が、夜光塗料で描かれている。

歩いている途中で、雨が降ってきた!
昨日、遠野駅で列車を待っている途中、テレビの天気予報を見ていて、
雨が降ることはわかっていたのだが、
東京を出る前の週間予報では3日間とも晴れだったので、
傘を持ってきていなかったのだ。
引き返そうかとも考えたが、目指すゲーセンの住所は「アルテマルカン内」。
「アルテマルカン」とは多分、スーパーかホームセンターだろうから、
傘を売っているはずだと考え、先へ進む。

いよいよ本降りになろうかというとき、
幸いにも「アルテマルカン」の看板が見えてきた。

小走りで店内に入り、傘を購入。
薬売り場があったので、貼り薬とカゼ薬も購入する。
さらに喫茶コーナーで、コーラを飲んでひと休み。
あれ? ゲームコーナーはどこだ?

2階にあった。「ハロータイトー アルテ花巻店」。
プライズ、プリクラ、大型機が中心だが、ビデオゲームもわずかながらある。

『ストリートファイターZERO3』をやってみる。
ダルシムでプレーし、1人めのミカに負け。
春麗で再プレー。リュウに勝ち、2人めのコーディに負け。
\100で2クレジットという設定だったので、マイナス\50円で済んだけど。

『子育てクイズ マイエンジェル2』で巻き返しを図ろう。
時間はかかったものの、なんとか8歳まで行った。
スタートが0歳なので、8面クリアーという扱いにする。
ゲーム路銀 \3,400+\650=\4,050
7時19分。外に出たら雨は上がっていた。
7時30分、花巻駅に戻る。
今日は花巻から先へ進むことを想定していたので、北上のホテルを予約している。
幸い7時48分の上りがあった。これに乗って北上へと向かおう。
電車の左手の窓から、セガワールドが見えた。
花巻駅からかなり離れている。徒歩で行くのはちょっと無理か。
59分、北上駅着。ホテルのレストランがまだ開いていて良かった。

現在のゲーム路銀
\4,050

今回のルート


花巻観光協会(旧東和町含む)  花巻市観光課  JR東日本盛岡支社
次回、「日本縦断ゲーセン紀行 36.岩手編(8)」では、
雨の北上でひと騒動。
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